2008年06月09日

物語チェコの歴史

物語チェコの歴史―森と高原と古城の国 (中公新書)
物語チェコの歴史―森と高原と古城の国
  • 発売元: 中央公論新社
  • 価格: ¥ 861
  • 発売日: 2006/03

 チェコは憧れの国のひとつです。いつかは必ず訪れたいと思います。そのチェコの歴史を人物面から追ったのが本書。感想についてはこちらもどうぞ。

第1章 幻のキリスト教国モラヴィア
第2章 王家のために生きた聖女
第3章 皇帝の住む都として
第4章 「異端者」から「民族の英雄」へ
第5章 貴族たちの栄華
第6章 書籍づくりに捧げた生涯
第7章 大学は誰のものか
第8章 大作曲家を迎えて
第9章 博覧会に賭けた人たち
第10章 「同居」した人々,そしていなくなった人々
チェコ略年表
参考文献

 チェコの歴史を各時代を象徴する人物の生涯を辿ることで浮き彫りにした一冊。ヤン・フスやカレル4世など著名な人物も当然その中に含まれますが,中世プラハの出版業者
メラントリフという市井の民も取り上げられているのが面白い。著者の専門領域である近世以前に偏っている傾向は見受けられますが,チェコの通史自体がそもそも少ないので,それなりに価値のある本ではあるでしょう。フス戦争の詳細とヤン・ジシュカやプロコプら勇将たちの姿が描いてあれば,なお良かったのにとは思います。
 本書で初めて知った人物が第2章の中核となる聖女アネシュカ。プシェミスル朝のオタカルI世の娘として生まれ,紆余曲折を経てアネシュカ修道院を興すまでになった彼女は,しかし王朝を存続させる為に献身した政治家としての一面もありました。ローマ教皇と神聖ローマ皇帝という対立する二軸の狭間で,ローマ教皇側からすれば有力諸侯であるチェコ王ヴァーツラフの妹として多大な影響力を持つアネシュカの存在は決して無視できないものとなっていました。敬虔で清らかな修道女でありながら,他方ではチェコ王家の為に尽力する彼女の姿はひどく魅力的に思えます。しかし,彼女の尽力は甥オタカルII世の華麗な活躍と劇的な敗北により塵埃に帰すこととなります。その才によりチェコ王国の版図を広げた彼はそれ故に多くの諸侯を敵に回すことになり,最終的にマルヒフェルトで敗死という運命をたどります。甥の姿がアネシュカの目にはどのように映ったのでしょうか。彼の死を見届けてからアネシュカは70年の生涯を閉じたといいます。ちなみに1989年にヨハネ・パウロII世によって,アネシュカは聖人に認定されています。
 チェコの通史としての価値は十分にありますが,内容としてはいささか物足りなかったのも事実。それでも聖女アネシュカなる魅力的な人物の存在を知ることが出来たことには感謝しています。このアネシュカについてはもっと深く知りたいのだけれども,日本語で読める資料はあるのでしょうか。また,一代の英傑たるオタカル2世も面白そうな人物ですね。その業績からボヘミアにおいて彼はオタカル大王と呼称されているようです。こちらもきちんと調べてみたいと思います。

〈参考〉
オタカル2世
プシェミスル朝
ヤン・ジシュカ
posted by 森山 樹 at 22:24| Comment(0) | TrackBack(0) | 中欧史
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。
この記事へのトラックバックURL
http://blog.sakura.ne.jp/tb/15850650

この記事へのトラックバック