2008年06月16日

ダルタニャンの生涯

ダルタニャンの生涯―史実の『三銃士』 (岩波新書)
ダルタニャンの生涯―史実の『三銃士』
  • 発売元: 岩波書店
  • 価格: ¥ 735
  • 発売日: 2002/02

 デュマの小説〈ダルタニャン物語〉の主人公ダルタニャンのモデルとなった実在の人物シャルル・ダルタニャンの生涯を描いた読み物です。『二人のガスコン』で同じくダルタニャンを描いた佐藤賢一の手によるものだけに読み応えがあります。感想についてはこちらもどうぞ。

I 三銃士
II パリに出る
 1 偽らざる素生
 2 ガスコンの気質
 3 なぜダルタニャンか
III 出世街道
 1 マザラン枢機卿
 2 フロンドの乱
 3 足場を固める
 4 フーケ事件
 5 パトロンとして
 6 栄達と苦悩
 7 最後の戦争
IV ダルタニャンの末裔


 『三銃士』と言えば,印象が強かったのはNHKで放映されていた『アニメ三銃士』です。長大な原作の趣向を上手く編曲して子供向けに改めたアニメで非常に楽しんでいた記憶があります。コンスタンスことボナシュー夫人やミレディーの扱いは原作とは大きく異なっていましたが,あれは流石に仕方がないことでしょう。アラミスが女性だったことには驚きましたが。リシュリュー枢機卿とその腹心ロシュフォール伯爵の2人が大好きでした。勿論,ミレディーは別格の存在でしたけれども。
 この『ダルタニャンの生涯』を読んで思うのは,『三銃士』は自分が好きな要素が全て備わった小説だったのだなということ。その意味では現在の自分の嗜好の原点のひとつと言えるのかもしれません。それにしてもルイ13世やリシュリュー枢機卿,アンヌ・ドートリッシュ,バッキンガム公が活躍する第一部『三銃士』を始めとして,第二部『二十年後』ではフロンドの乱と英国清教徒革命を背景にルイ14世やマザランがチャールズ1世,そして第三部『ブラジュロンヌ子爵』ではコルベールやフーケ,ルイーズ・ド・ラヴァリエール,更に鉄仮面こと王弟フィリップなど17世紀のフランス史を鮮やかに彩る人物が総登場の感さえあります。〈ダルタニャン物語〉を通読したのは児童向けの抄訳版だったはずなのですが,当時よりも遙かにこの時代の知識を得た今ならば,また違う楽しみ方が出来るのでしょうね。残念ながら現在〈ダルタニャン物語〉を揃えるのはなかなかに困難なのですが,いつかは必ず再読したいものです。
 なお,この『ダルタニャンの生涯』で描かれる実在の人物としてのダルタニャンも相応に魅力的。特にマザラン枢機卿の密偵として活躍,更に国王ルイ14世に重用される銃士隊隊長としてのダルタニャンは格好いいです。そして面白いのは歴史に名を残す契機となったのは,トレヴィル麾下の銃士としてではなく,マザランの腹心として,だったということ。ただし,デュマの小説と同じく快男児であったことには変わりがなかった模様。国王の命で逮捕し護送することになった財務長官フーケに対する態度がそのことを如実に表しています。これは素直に嬉しいところです。また,ダルタニャンの2人の甥ピエールとジョゼフも後に銃士隊長となったとのこと。そればかりか,ピエールはフランス軍元帥にまで栄達した模様で,この2人の物語もなかなかに興味をひかれます。
 変わりゆく時代の中で変わらぬ騎士道精神を見せてくれたダルタニャンだからこそ,デュマも小説の主人公として取り上げ,読者たる私たちも好意を抱くのでしょう。佐藤賢一が繰り返す「世界で最も有名なフランス人はダルタニャンかもしれない」という言は非常に示唆的に思えます。
 巻末に参考文献がなかったのは残念。日本語で読める資料の一覧があれば非常に参考になるんですよね。是非とも掲載して欲しかったです。

〈参考〉
ダルタニャン物語
フロンドの乱
リシュリュー
鉄仮面
posted by 森山 樹 at 00:57| Comment(0) | TrackBack(0) | 西欧史
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