2008年07月06日

物語スウェーデン史

物語 スウェーデン史―バルト大国を彩った国王、女王たち
物語 スウェーデン史―バルト大国を彩った国王、女王たち
  • 発売元: 新評論
  • 価格: ¥ 2,310
  • 発売日: 2003/10

 北欧諸国はどこも好きなのですが中でも最隆盛期には北方の覇者として名を馳せたスウェーデン王国は関心が深い国のひとつです。かつてのスウェーデン王国には現在の先進的福祉国家とはまた違った印象があります。

第1章 独立戦争の覇者
第2章 30年戦争の英王
第3章 17世紀を駆け抜けた女王と二人の戦士国王
第4章 神々の黄昏れ
第5章 国王暗殺
第6章 流浪の国王,異郷に死す
第7章 輸入された武人国王
第8章 王権衰退期の国王たち
第9章 国民の中の国王たち
補章 隣国の王たち
参考文献一覧


 スウェーデンと言えば,やはり30年戦争の“北方の獅子”グスタフ・アドルフと北方戦争のカール12世,この二人の有能な軍人国王が魅力的。そして,ナポレオン戦争時にフランス元帥からスウェーデン皇太子に迎え入れられたベルナデッテことカール・ヨハンも数奇な運命をたどった人物です。現在では福祉国家としての印象が強いスウェーデンですが,中世においては北方の覇者としてロシアの強敵だったんですよね。残念ながらグスタフ・アドルフもカール12世も夭折した為に覇者として君臨し続けることは出来ませんでした。彼らがその生を全う出来ていたならば,現在のヨーロッパの地図はまた違ったものとなっていたのではないでしょうか。
 本書ではグスタフ・ヴァーサによるデンマーク王国からの独立以降について,歴代国王の評伝といった形で綴られています。基本的には通史といってもいいでしょう。割合に暗君や凡君といった印象を受ける国王が少ないのが印象的でした。もっとも,前述のグスタフ・ヴァーサやグスタフ・アドルフ,カール12世を除けば,それ程傑出した指導者も見受けられないのではありますが。平均的な為政者に恵まれていることが特徴的であり,どこかスウェーデン王国らしいなと思います。そんな中で面白かったのはグスタフ・アドルフの後継となったクリスチーナ女王の存在。プロテスタント諸国を率いて三十年戦争を戦ったグスタフ・アドルフの後継者がカトリックに改宗するあたり皮肉なものを感じてしまいます。ちなみにこのクリスチーナは王子としての教育を受けていた為,乗馬や射撃を好んでいたそうです。更にはドイツ語,イタリア語,フランス語,スペイン語,ラテン語,ギリシア語にも通じ,グロティウスやデカルトとも交流があった一流の教養人でもありました。男装を好んだ多才な麗人と非常に興味深い対象なのですが,残念ながらカトリック改宗と財政破綻を招いたということでスウェーデンでは評判は芳しくないようです。また,グスタフ・アドルフとクリスチーナ女王に仕えた重臣オクセンシェルナも面白そうな人物。激情家のグスタフ・アドルフと冷静沈着なオクセンシェルナの主従関係は絵になりそうです。
 現在在位中のカール16世までを扱っており,北方の覇者として君臨していた時代から,北欧の貧国として苦汁を舐めた時代,そして先進的福祉国家としての現在に至るスウェーデン王国の大雑把な通史を学ぶ上ではそれなりに面白いのではないでしょうか。これで参考文献が充実していれば,なおよかったのだけれども。日本語で読める参考文献として挙げられているのが自著だけというのは,やはり問題かと思われます。内容としてはそれほど濃くなく入門書としての位置づけにある本ゆえに,更にスウェーデン史を学ぶ上での専門書を示して欲しかったところです。

〈参考〉
グスタフ2世アドルフ
アクセル・オクセンシェルナ
クリスチーナ女王
大北方戦争
カール12世
posted by 森山 樹 at 09:20| Comment(0) | TrackBack(0) | 北欧史
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