2008年07月06日

アイスランド

アイスランド―歴史と文学
  • 発売元: 紀伊国屋書店
  • 発売日: 1994/01

 アイスランドと言えばサガやエッダといった中世文学が魅力的ですが,ヨーン・スヴェンソンの『ノンニの冒険』も大好き。子供の頃に読んだ児童文学の中でも想い出深い作品のひとつです。邦訳も幾つかありますのでお勧め。いつかは原語で読みたいものですが。

前篇 アイスランドの歴史
1 発見と植民
2 初期移民の生活−自由国の成立−
3 グリーンランドと北米大陸の発見
4 キリスト教への改宗
5 学芸の興隆
6 スノリの暗殺と自由国の終焉
後篇 アイスランドの文学
1 アイスランド文学の展望
2 エッダと北欧の神話・伝説
3 スカルド詩人たち
4 散文物語サガ
むすび その後のアイスランド−現代までの歩みの概観−
参考文献


 アイスランド自由国の終焉に至るまでの初期アイスランド王国の歴史はヴァイキングとともにありました。幸村誠『ヴィンランド・サガ』は創作ですが,その基本的な設定は割合史実に則っています。クヌート大王やレイフ・エイリクソンは勿論のこと,トルフィンやトールズ,トルケルらもその原型となった人物は歴史に名を残しています。一方の雄アシェラッド・ウォラフソンの原型は寡聞にして知りませんが,その祖は古代ブリタニアの英雄アルトリウス,すなわちアーサー王となっており,古代欧州史好きにはたまらないものがあります。ヴァイキングの入植からアイスランド自由国の終焉までを語った本書にも,その『ヴィンランド・サガ』の登場人物を思わせる人物や同じ名前を持つ人物が多数登場しております。歴史に材を採った創作を楽しむ上で背景となる時代を知ればより楽しめるのは当然のこと。その意味でも本書は数少ない古アイスランドの通史として得難いものとなっています。
 余談ですが,この時代の王は様々な異名がついています。“無思慮王”エゼルレッド2世や“双叉髭王”スヴェン1世など。その中で面白いのはハーラル1世の異名“青歯王”です。名前の由来は寡聞にして知らないのですが,この“青歯王”という異名は現代の情報社会の中でごく普通に使われています。すなわち無線通信規格Bluetoothです。ノルウェーとデンマークを無血統合したハーラル1世の如く,乱立した無線通信規格を統合する意志を込めて名付けられたのだとか。このような形でかつての偉大な王の名前が用いられていることに浪漫を感じてしまいます。
 歴史と文学の両面から古アイスランドを見つめる本書は,興味のある人間にとってはこの上もなく面白い本だと思います。前篇の歴史部分も後篇のサガやエッダの部分もともに興味深いもの。特に後篇では邦訳されていないサガやエッダの粗筋が載せられており,非常に参考になります。『ヴォルスング・サガ』とゲルマン叙事詩『ニーベルンゲンの歌』の関係は有名ですが,『ローランの歌』で有名な『シャルルマーニュ武勲詩』も『カルラマグヌス・サガ』という形で残されているのは初めて知りました。サガというよりも騎士道物語に近いものがあるということですが,それでもやはり読んでみたく思います。その為にはアイスランド語を勉強しなくてはならないでしょうけれど。
 欲を言えば日本語で読める参考文献が欲しかったところではあります。アイスランドへの関心を高めるための著作との言がはしがきにあるだけに尚更に。

〈参考〉
ヴァイキング
クヌート
スノリ・ストルルソン
ヘイムスクリングラ
posted by 森山 樹 at 11:10| Comment(0) | TrackBack(0) | 北欧史
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