2013年10月17日

スティーブ・ジョーンズ『罪と監獄のロンドン』

罪と監獄のロンドン


第1章 あなたは奥さんを叩きませんか?
第2章 人間に対する犯罪
第3章 危険な女たち
第4章 児童犯罪
第5章 惨めな乞食たち
第6章 法廷の明るい側面
第7章 懲役に行く前に
第8章 再留置中の囚人たち
第9章 裁判と判決
第10章 重労働,まずい食事,硬いベッド
第11章 監獄病院
第12章 看守と規律
第13章 監獄の女たち
第14章 礼拝堂
第15章 脱獄
第16章 釈放

 ヴィクトリア朝時代のロンドンの犯罪と刑罰について紹介する本です。ヴィクトリア朝ロンドンと言えば,どうしてもシャーロック・ホームズらに代表される印象が強いのですが,同時に切り裂きジャックら残虐な怪人が跋扈した時代でもありました。創作の中では華やかな時代ではありますが,現実としては繁栄の謳歌の陰で貧困や飢餓,疫病らが蔓延する時代でもあったようであります。本書は犯罪と刑罰という側面からヴィクトリア朝ロンドンの闇を照らすという意味において興味深いものがありました。社会の最底辺から見るロンドンの姿は憧れの近代都市とは全く異なっています。様々な犯罪が横行し,それに対する処罰も苛烈そのもの。特に個々の犯罪事例はいろいろなことを考えさせられます。厳しい身分制度に由来する社会の閉塞感が犯罪の温床となっていることが良く分かります。一方でその犯罪者に対する刑罰や監獄での扱いも劣悪そのもの。切り裂きジャックら著名な犯罪は本書では扱われず,取り上げられるのは普遍的な犯罪ばかりなのですが,だからこそかえって当時の社会事情が生々しさを交えて伝わってきます。歴史学というよりも社会学を扱った内容になりますが,歴史の徒としても非常に興味深く読むことが出来ました。姉妹作である『恐怖の都・ロンドン』と『鍵穴から覗いたロンドン』も読んでみたいものであります。
posted by 森山 樹 at 23:12| Comment(0) | TrackBack(0) | 英国史